「いつか治療しよう・・・」その意外なリスク
しっかりと「噛めない」からカロリーオーバー、さらに…
奥歯を失い、「いつか治療を・・・」と思いながら治療を先延ばしにされている患者さんをお見受けすることがあります。奥歯を失うと、咀嚼機能が低下します。咀嚼機能が低下すると食べにくくなるものの代表が「肉と野菜」です。噛めない状態は、強いストレスを生み出すため、柔らかくて食べやすいものに自然と手が伸びやすくなります。
例えば、カレーライスやラーメンうどんといった食事です。
「噛めない」というストレスを感じずに済む食事は、カロリーオーバーを引き起こしやすい一方で、たんぱく質や食物繊維等が乏しく、深刻な栄養不足をまねきやすくなります。
その上、肥満につながりやすく、健康増進には逆効果です。
しかし、現実的に噛めないものが多くては栄養改善ができません。病気の発症リスクを減らすためにも歯科治療で噛めるお口を取り戻すことが必要です。
咀嚼機能の低下は、体力低下の要因にも
咀嚼機能が落ちると筋肉・体力はどう変わるのでしょうか?筋肉の主成分はたんぱく質です。
たんぱく質の摂取が不足すると「サルコペニア」になりやすく、噛めないお口はサルコペニアの重大なリスクになります。
サルコペニアとは、加齢によって生じる筋肉量・筋力の低下のことです。
高齢者の体力や運動機能を急激に低下させ、転倒や寝たきりの原因として問題視されています。
「足が細くなった、体重が減った」と思ったら…
奥歯を失うと肉や野菜が苦手になる方が多いことはお話ししましたが、肉や野菜が不足すると筋肉を維持するのにとても不利になります。足が細くなった、体重が減ったと思ったら、実は単に筋肉量が減っただけでサルコペニアに陥っていたというケースもめずらしくありません。
サルコペニア度チェック
CHECK1
- ①椅子に座り手を使わずに片足で立ち上がれる
- ②片足立ちで靴下が履ける
- ③片足立ちで60秒間キープできる
*1つも出来なければサルコペニアの可能性があります。
CHECK2
はじめに親指と人差し指で指わっかを作り、ふくらはぎの一番太いところに当てます。
サルコペニアの危険度
危険度:高 | 危険度:中 | 危険度:低 |
---|---|---|
指わっかが余って隙間ができる | 指わっかとちょうどぴったり | ふくらはぎが太くて指わっかがとじない |
危険度:高 | 指わっかが余って隙間ができる |
---|---|
危険度:中 | 指わっかとちょうどぴったり |
危険度:低 | ふくらはぎが太くて指わっかがとじない |
しっかりと栄養の取れるお口に戻すにはどのような治療法があるのか、どのような治療法がご自分に合っているのかぜひ私たちにご相談ください。
出展:nico2019年10月号