睡眠時無呼吸症(OSA:オーサ)について
質のいい睡眠は人生の質を高めます。みなさんはぐっすり眠れていますか?いびきがうるさい、呼吸がとまっている、寝相が悪い、何度もトイレにおきる・・・そんな症状にこころ当たりはありませんか?
2003年に山陽新幹線のOSAが原因で残念な事故が起きたことで注目が集まるようになりました。
社会的なインパクトは、同様の事故におさまらず学習、労働能力の低下、事故の増加、QOL(生活の質)を低下させる心血管系障害、脳血管系障害などのリスクを高める、寿命を短くする、と多岐にわたっています。
OSAとは?
OSAは「呼吸に伴う気流が鼻孔あるいは口のレベルで少なくとも10秒以上停止した状態」をいいます。推定される患者数は、200万人といわれています。
睡眠時無呼吸症は、睡眠障害の一つで原因により大きく3つに分類されています。閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS:オーサス)、中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSA)、これら2つの混合型睡眠時無呼吸症候群です。
OSAの症状は?
OSAの症状は、多岐にわたります。大人では、、、
夜間
- ①いびき
- ②疲労の回復しない睡眠
- ③不眠
- ④頻回の中途覚醒
- ⑤夜間の流延
- ⑥夜間の頻尿
- ⑦寝汗
- ⑧性機能低下(ED)
昼間は
- ①日中の眠気あるいは疲労感や倦怠感
- ②記憶障害、認知障害
- ③起床時の頭痛、頭重感
- ④起床時の口腔乾燥感
- ⑤精神状態(うつ、気力減退など)
などがあげられます。特に注意して頂きたいのは「ロバのいななき」と言われているいびきです。ヒーヒーという高音でとも形容される音です。これは致死性のいびきといわれ、多系統萎縮症といわれる疾患にかかっている可能性があるので医療機関の受診をつよくおすすめします。
また子供に関してですが、子供は基本的にいびきをかきません。寝息が荒い程度でしたら、問題ないのですが、以下にあげる症状があったら注意が必要です。
- ①大きないびき
- ②就寝中のあえぎ呼吸、息が止まる
- ③就寝中のせき
- ④頻繁に寝返りを打つ
- ⑤たびたび夜中に目を覚ます
- ⑥夜尿症
- ⑦感情的に不安定、衝動的、攻撃的、ADHA様症状
- ⑧昼間の眠気
- ⑨集中力の欠如
- ⑩成長の遅れ
- ⑪胸郭変形(漏斗胸)
などがあげられます。これらの症状に心あたりがある方は、一度、医科に受診することをお勧めします。小児OSASは成人と異なる病態を示し、独自の診断法、治療の考え方が必要であると考えられていますが、十分な研究はまだ未だなされていません。
小児は心身ともに成長・発育時期であり、睡眠中の成長ホルモンが分泌不足による影響は多岐にわたり、その上、不可逆的な影響となる部分もあるので注意が必要です。
OSAにかかりやすい人は?
とくに、肥満傾向のある40~60歳代の男性に多く、女性では閉経後に増加していきます。
他には、口蓋垂(のどちんこ)が長い人、太っている人や首が短い人、あごをひいたり手をあげたりして寝ている人、下あごが後退あるいは小さい人、口呼吸や口を開けて寝るクセがある人、だんご鼻や鼻筋が曲がっている人、がOSAにかかりやすいと報告されています。
OSAの合併症
上記の症状以外に様々な合併症がおきます。呼吸が止まると、血液に酸素が足りなくなり、身体の隅々まで酸素がいきわたらなくなります。
すなわち、動脈血酸素飽和度(SaO2)の低下が呼吸器系、循環系、脳神経系機能に影響を及ぼすと言われています。具体的には1、高血圧2不整脈3脳血管障害4糖尿病5突然死6多血症、周術期呼吸管理、です。
多くの報告がございますが、スイスの一般住民での報告では中等度のOSAは、男性で49.7%、女性で23.4%、高血圧のリスクは1.6倍、糖尿病は2倍、メタボリック症候群は2.8倍、うつは1.9倍と増加しています。
また、アメリカではOSAS患者170万人を対象とした報告では、脳卒中は3.51倍、うつは4.99倍、高血圧は2.14倍、心不全は4.30倍、不整脈は3.26倍、虚血性心疾患は2.54倍、2型糖尿病は2.29倍となっています。最後に、突然死についてですが、健常者に比べて2.6倍とのことです。
OSAの検査について
医療機関での問診後にご自宅でスクリーニング、もしくは簡易検査をします。AHIが40未満の方は精密検査、その後、治療方針を決定していきます。(しかし、重症度や病状によっては主治医の判断によりただちに治療を開始する場合もあります。)
OSAの治療方法について
・持続陽圧呼吸療法:CPAP(シーパップ)
・口腔内装置:OA(オーエー)
・手術による治療
があります。原因、症状にあった治療方法があるので、医療機関でご相談ください。
生活習慣の改善:生活習慣の改善のみではOSASを治すことは難しいですが、他の治療と組み合わせるとOSASを軽減できます。また、少しでも良い睡眠がとれるように、眠りにつきやすい環境を整えることも必要です。例としては、減量、減酒、横向きに寝る、などです。
最後に・・・
OSASに関して直接、歯科医院が関われることは、口腔内装置:OAの作製くらいです。一方で他国では、OSAのリスクのある方を発見することが歯科医院の大切な仕事との声が上がっています。OSAにリスクがある方がさくら歯科に来院なさったら、声をかけていきたいと思います。さくら歯科に関わる方々がより健康であるように、少しのおせっかいを始めていきたいと思います。
※セミナーのテキストと配布資料(フィリップス・レスピロニクス合同会社OSASガイドブック)より