杉並区下井草の顕微鏡歯科・予防歯科・未来型歯科:さくら歯科の吉村です。
今回のコラムは、様々ある『歯周病菌』について説明していきたいと思います。歯周病と聞くと、なんとなくのイメージで、歯や歯ぐきの病気なんだろうな、あまり自分には関係ないかな、と思われる方が非常に多いのでは無いでしょうか?
当然のごとく、歯周病というお口の病気は、初期段階ではほとんど無症状の病気です。悪化し、重篤化しないと、目に見えた症状は起こらないので、沈黙の病気とでもいいましょうか。
いずれにせよ、非常にやっかいなお口の病気だとご理解いただければと思います。それでは、歯周病について、是非知っておいていただきたい点を簡潔にまとめてお知らせしたいと思います。
最もメジャーな感染症、それが歯周病
世界で最も、患者さんが多い感染症とは何だと思いますか?
ズバリ、『歯周病』です。この事実は、実はギネスブックにも認定されているほどなのです。
そして、日本人の30歳以上(成人)の8割程度が、この病気にかかっています。このあたりは、歯科業界では有名な話ですが、一般の方々には、残念ながらあまり認知されていない事実です。
まずは、歯周病の進行について「おさらい」してみましょう。
歯周病は、下記のように症状により4段階に分けられます。右にいけばいくほど進行しているということです。もちろん、初期の段階の方が治療は簡単で、深刻化・重症化すればするほど、治療は複雑になります。
最初に述べたとおり、歯周病は感染症であると同時に、実は『生活習慣病』でもあります。皆さんの食生活を含めた生活習慣により起こる感染症ですので、皆さんの心がけ次第では、歯周病を起こさせない進行させないようにすることが可能です。ここは、とても大事な所なので覚えておいていただければと思います。
それでは、ここから本コラムの本題に入ります。
まずは、歯周病を感染症としての側面からお話をしてみたいと思います。
感染症とは、ウイルスや細菌などの病原体が身体に入り、引き起こされる病気をいいます。 すなわち歯周病菌がこの病気を引き起こしているということです。
まずは、悪玉歯周病菌の存在です。その名も「レッドコンプレックス」といわれる歯周病との関連性が最も高い3菌種です。
次の3菌種がレッドコンプレックスです。
レッドコンプレックス
・Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
・Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)
・Tannerella forsythensis(タネレラ・フォーサイセンシス)
それぞれ、P.g菌、T.d菌、T.f菌と略されることが多いです。
3つの悪玉菌について
このレッドコンプレックスと言われる悪玉歯周病菌のうち、まずはPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)について、もう少し詳しく説明します。
Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)いわばP.g菌は、慢性歯周炎の原因菌で、慢性歯周炎患者さんの歯周ポケットから、高頻度で検出されます。付着する能力が非常に強いため、バイオフィルムの形成に役立っているといえるでしょう。また、P.g菌の内毒素は、骨を溶かす作用があるだけではなく、口腔内で悪臭を放ちます。
歯周病の悪臭は、このP.g菌の内毒素が関与しているのです。
P.g菌の問題
・慢性歯周炎の原因菌
・強力な付着力
・内毒素は悪臭を放つ
ちなみに、このP.g菌はグラム陰性細菌で、黒色集落形成菌に分類されます。最も悪い菌と現在は言われています。
次に、Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコラ)です。いわばT.d菌は、歯周病の病巣局所で増加が見られ、歯周組織の中や血管の中にまで侵入して増殖していきます。
そして、Tannerella forsythensis(タンネレラ・フォーサイセンシス)です。T.f菌は、慢性歯周炎の病巣局所見られる歯周病原生菌です。
紡錘状という特徴的な形態をしており、Fusobacteriu nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアータム)が周囲にいると、発育が促進されるという性質を持っています。また、P.g菌と同様、内毒素によって歯周組織に悪影響をもたらします。
(参考:みんなの歯学より改変)
歯周病の治療について
繰り返しますが、感染症とは病原性の微生物が人の体内に侵入することで引き起こす疾患です。
医科では薬剤、サイトカイン、抗体を投与する方法が一般的です。歯科では、歯周病の治療に薬剤を投与する方法がとられます。(主に急性期:痛みがあるとき)
歯科では、歯周病の治療に低用量ドキシサイクリン投与法が効果的とされていますが、日本では保険適応ではありません。日本では日本歯周病学会が「歯周病患者における抗菌療法の指針 2010(リンク)」を出しており、どなたでもPDFファイルでご覧いただくことは可能です。
この資料では、
私もこれに賛成です。つまり、まず最初から抗菌療法(薬物投与)ありきではなく、予防メンテナンス中心で治療をすすめるという事です。
一方で、エビデンス、ガイドラインありきの治療は慎むべきと考えております。ガイドラインを知っている上で、どう扱うかがとても大切だと考えます。
私はかかりつけ歯科医院として、医学的に納得できる範囲内で、患者さんに寄り添った提案ができることが大事だと思っています。これからも少しでもいいと思う治療を価値観の共有できる方と分かち合っていきたいと思います。